平成22年1月から平成23年12月までにめまいを主訴として当院を初診した患者541例のうち当院初診前の受診歴がはっきりした531例(男158例、女373例)の統計では
- 重複受診の比率は年齢ともに増加する。
- 重複受診により医療機関選択に大きな変化は認められず、めまい診療では医療連携が十分に機能していない可能性がある。
- 重複受診の時期は様々で発症後1カ月という早い時期から1年あるいはそれ以上経過して後重複受診する症例などさまざまである。
- 疾患により重複受診に違いが起こることは少ない。重複受診例では身体的動作に伴う自覚的障害度は同じでも、情動的あるいは社会生活での障害度が強いことが考えられ、この点に配慮した診療が重要である。めまい診療においては重複受診例の特徴を理解したうえで診療を行う必要があるが、重複受診は様々な要因、特に医療機関の差の影響も大きく、個々の医療機関の実情を反映した診療によりめまい症例の重複受診に関する適切な受療行動を期待できる。「いままでにめまいになったことがある」と答えたものの25.9%は医療機関を受診していなかった。その理由の47.5%は「めまいが一過性であった」と答えていた。
- めまいで最初に受診した医療機関は診療所48例(47.5%)、病院39例(38.7%)、大学病院10例(9.9%)であり、めまい患者はまず身近な医療機関を受診する場合と最初から専門的な治療を求めて規模の大きな医療機関を受診する場合とに大別された。
- 最初に受診した診療科は耳鼻咽喉科47.4%、内科20.6%、脳神経外科3.1%であり、めまい診療で耳鼻咽喉科医の果たす役割は大きいと考えられた。
- 約7%が最初に救急外来を受診した。めまい相談医の救急医療に対する対応も検討する必要があると考えられた。
- めまい診療に対する最も多い不満は「治療を受けても症状がなかなか改善しない」であり(27.8%)、特に複数受診者に多かった。次いで「めまい専門医がはっきりしない」が多かった(19.6%)。「めまいの訴えを良く聞いてくれない」「検査をきちんとしない」「診療結果の説明が不十分である」 (それぞれ10.3%)も認められた。
- 医療機関受診者の34.8%は2か所以上の医療機関を受診する複数受診であり、その理由の49%は「症状が軽快しないあるいは再発した」であった。複数受診のさらに詳細な検討は今後のめまい相談医の診療に有益であると考えられた。
- 医師の紹介による複数受診は約10%であった。めまい診療では医療連携が必ずしも効率よく機能しておらず、効率的な医療連携は今後の課題と思われた。
- めまいを専門とする診療科を耳鼻咽喉科とする回答が最も多く半数近かった。
- めまい患者のめまいの専門医療に対する期待は大きく、相談医が果たす役割は重要であると考えられる。相談医にはめまい患者の受療行動を理解した診療が求められる。
このデータはめまい学会専門誌に掲載されています。